世界人権宣言

「世界人権宣言」は、第2次世界大戦の惨禍が、国益優先・人権軽視の思想から生まれた との反省から、1948年12月10日にパリで開かれた国連総会で採択されました。

 

 

---「世界人権宣言」の起草に携わったエレノア・ルーズベルトのことばから抜粋---

人権はどこから始まるのでしょう。

小さな場所からです。 家の近くのとても小さくて世界地図では見えない場所からです。

でもそうしたところが私たちの住んでいる世界なのです。

私たちが住んでいる地域、通っている学校、働いている工場や農場や会社。 これらのところが、男女・子どもを問わず、すべての人が正義や機会、 人としての尊厳を平等に差別なく求める場所なのです。

もしこうした権利が、このような小さな場所で意味を持たないのなら、 人権が意味を持つところなんてどこにもありません。

小さな場所で人びとが関心を持って実行しないなら、 もっと大きな場所で人権が保障されるようにはならないでしょう。

世界人権宣言 前文

人間社会のすべての構成員が生まれながらにもっている尊厳と、平等で譲る ことのできない権利を認めることは、 

世界における自由、正義そして平和の基礎であるので、 

人権の無視と軽視が、 

人類の良心を踏みにじった数々の野蛮な行為をもたらし、 

そして言論と信仰の自由が保障され、恐怖と欠乏から解放される世界の到来が、 

人々の最高の願望として宣言されたので、 

人が、専制と圧迫に対する最後の手段として反逆に訴えることをなくすためには、 

法の支配によって人権を保護することが絶対に必要なので、 

国々の間の友好関係が発展するよう促進することが、きわめて重要なので、 

国際連合の諸国の人々は、国際連合憲章において、 

基本的人権、人間の尊厳 と価値、 

そして男女の同権に対する信念を再確認し、 

より自由に、社会の進歩と 生活水準の向上を促進すると決意したので、 

加盟国は、人権と基本的自由が全世界で広く尊重され守られるよう促進することを、 

国際連合と協力して成し遂げると誓約したので、 

これらの権利と自由に対する共通の理解は、 

この誓約を完全に実現するために もっとも重要なので、 

よって、ここに、 国際連合総会は、 

社会のあらゆる個人とあらゆる機関が、 

この宣言を常に念頭に置きながら、 

加盟国の人々にも加盟国の管轄下にある領土内の人々にも、 

指導と教育によって これらの権利と自由を尊重するよう促進する努力をし、 

また国内的にも国際的にも より進歩的な方法で、 

それら権利と自由が普遍的かつ効果的に承認され守られる ことを確実にする努力をするために、 

この人権に関する世界宣言を、すべての人々と すべての国々が達成すべき共通の基準として、 

声明する。

 

第1条

すべての人は、自由に、そして尊厳と権利について平等に 生まれている。人は、理性と良心を授けられており、互いに きょうだいの精神をもって行動しなければならない。


第2条

人は皆、人種、皮膚の色、性別、言語宗教、政治上やその他の意見、民族的 又は社会的な出身、財産、生まれその他の身分による、どのような差別も受 けることなく、この宣言の掲げるすべての権利と自由を得ることができる。

さらに、その人の所属する国や地域が独立国か、信託統治地域か、非自治 地域か、またはその他、主権に何らかの制裁があるかどうかに関わらず、 政治上、管轄上または国際上の地位に基づくどのような差別も受けること はない。


第3条

人は皆、生命、自由、および身体の安全を守る権利をもつ。


第4条

人はだれも、奴隷にされたり、奴隷の状態に置かれたりすることはない。 奴隷と奴隷売買は、どのような形であれ、禁止する。


第5条

人はだれも、拷問を受けたり、残虐で人道に反する、あるいは品位を傷つける 待遇や刑罰を受けたりすることはない。


第6条

ひとは皆、法の前では、どのような場においても、一人の人間として 認められる。


第7条

すべての人は法の前では平等であり、どのような差別もなく平等に法の保護を 受けることができる。

すべての人は、この宣言に違反するどのような差別からも、 またそのような差別をそそのかすどのような行為からも、平等に保護される。


第8条

人は皆、憲法または法律によって与えられた基本的な権利を侵害する行為に対し、 法的権限のあるその国の裁判所による効果的な救済を受ける権利をもつ。


第9条

人はだれも、むやみに逮捕されたり、拘禁あるいは追放されたりすることはない。


第10条

人は皆、その人の権利と義務の決定、そして自分に対する刑事告発の決定に際し、完全に 平等な立場で、独立した公平な裁判所による、公正で公開された審理を受ける権利を もつ。


第11条

1.刑事上の罪に問われている人は皆、自己の弁護に必要なあらゆる保障がなされた公開の 裁判で、法律にしたがい有罪が立証されるまでは、無罪と推定される権利をもつ。

2.人はだれも、それが行われた時には国内法でも国際法でも刑事犯罪を構成しなかった *作為または**不作為によって、 有罪と判決されることはない。また、その刑事犯罪が行なわれ た時に適用される刑罰より重い刑罰は科せられない。
   *作為=法律で、人の行為のうち積極的な動作・挙動
   **不作為=法律で、人があえて積極的な行為をしないこと


第12条

人はだれも、その人の私生活、家族、家庭や通信にむやみに干渉されたり、名誉や信用を傷つけられたり することはない。


第13条

1.人は皆、それぞれの国内で、自由に移動し、居住する権利を持つ。

2.人は皆、自国を含むどの国からでも出国し、また自国に帰ることができる。


第14条

1.人は皆、迫害から逃れるための保護を他国に求めたり、その保護を他国から受けたりする 権利を持つ。

2.この権利は、非政治的犯罪によって、または国際連合の目的と原則に反する行為によって 起訴されている場合には、行使できない。


第15条

1.人は皆、国籍を持つ権利がある。

2.人はだれも、むやみに国籍を奪われたり、国籍を変える権利を拒絶されたりすることはない。


第16条

1.人種、国籍、宗教による制限なく、成年男女は、結婚し、家族をつくることができる。結婚 については男女とも、結婚しているあいだもそれを解消するときも、平等の権利をもつ。

2.結婚は、当事者どうしの、自由で完全な同意によってのみ成立する。

3.家族は社会の、自然で基本的な集団の単位であり、社会と国家によって保護される。


第17条

1.人は皆、他人と共同でもまた単独でも、財産を所有することができる。

2.人はだれも、その財産をむやみに奪われることはない。


第18条

人には皆、思想、良心、そして宗教の自由がある。この権利には、その宗教や信念を変える自由と、公的にも 私的にも、ただ一人でも他人と共同でも、布教、儀式、礼拝、行事を通じて、その宗教や信念を 明らかにする自由が含まれる。


第19条

人は皆、自由に意見し、表現する権利がある。この権利は、干渉を受けずに自分の意見をもつ自由と、 あらゆる手段で、国境にかかわりなく知識や考えを探し求めたり、受け取ったり、伝えたりする自由を含む。


第20条

1.人は皆、自由に平和的な集会を開き、共通の目的をもつ団体を組織することができる。

2.人はだれも、団体に所属することを強制されない。


第21条

1.人は皆、直接にまたは自由に選んだ代表者を通じて、その国の政治に参加する権利をもつ。

2.人は皆、平等に、その国の公務につく権利をもつ。

3.人民の意思が、政治の権力の基礎でなければならない。この意思は、定期的に行われる正しい選挙 によって表明されなければならない。その選挙は、一定年齢以上の全員による平等な選挙でなければならず、 しかも、秘密投票か、それと同等の自由が保障される投票手続きによって行なわれなければならない。


第22条

人は皆、社会の一員として、社会保障を受ける権利をもち、国家的な努力や国際協力を通じて、また各国の 組織と資源に応じて、尊厳を守り人格を自由に発展させるために欠くことのできない、経済的、社会的そして 文化的な権利を実現させることができる。


第23条

1.人は皆、働く権利と、勤めを自由に選び、適正で良好な労働条件を得、失業に対する保護を受ける権利をもつ。

2.人は皆どのような差別もなく、同等の労働には同等の報酬を受ける権利をもつ。

3.労働者は皆、自分自身と家族が人間の尊厳にふさわしい生活を確保できるだけの適正で良好な報酬を受ける権利 をもち、必要な場合には、他の社会保障手段による補充が受けられる。

4.人は皆、自分の利益を守るために、労働組合をつくり、これに加入する権利をもつ。


第24条

人は皆、休息し、余暇を楽しむ権利がある。この休息と余暇には、労働時間のほどよい制限と定期的な 有給休暇とが含まれる。


第25条

1.人は皆、衣食住、医療、また必要な社会事業を含め、自分自身と家族の健康と福祉のために 十分な生活水準を確保する権利がある。また、失業、病気、身体障害などの能力の喪失、配偶者 との死別、老齢、その他自分の力ではどうにもならない生活上の困難に対して、保障を受ける権利がある。

2.母親と子どもは、特別な保護と援助を受ける。子どもは皆、正式に結婚した両親から生まれたか どうかにかかわらず、社会の保護を等しく受ける。


第26条

1.人は皆、教育を受ける権利をもつ。教育は、少なくとも初等の基礎的な段階は、無償で行われなければ ならない。初等教育は、これを受けさせる義務がある。技術教育と職業教育は、広く一般に利用できるもの でなければならず、また高等教育は、学業の成果に応じて平等に受けられるものでなければならない。

2.教育は、人格を十分に発展させること、そして人権と基本的自由への敬意を強化することを目的とし なければならない。教育は、すべての国どうし、すべての人種的、宗教的な集団どうしの理解を寛容と友好を 深め、平和維持のための国際連合の活動を支援するものでなければならない、

3.親には、子に受けさせる教育の種類を選択する優先権がある。


第27条

1.人は皆、社会の文化生活に自由に参加し、芸術を楽しみ、科学の進歩とその恩恵を分かちあう権利をもつ。

2.人は皆、その人の創作した科学、文学、美術の作品から得られる精神的、物質的な利益を保護される権利をもつ。


第28条

人は皆、この宣言に掲げる権利と自由が完全に実現できる、社会的および国際的な秩序を求める ことができる。


第29条

1.人は皆、共同して営む社会においてのみ、その人格を自由に、そして十分に発展させることができるのであり、 その社会に対しての義務を負っている。

2.人は皆、権利と自由を行使するときには、法律で定められた制限にのみ従う必要がある。その制限は、 他人の権利と自由を正当に認め敬うことを保障し、民主社会の道徳、秩序、公共の福祉の正当な要求に 応じることのみを目的として定められる。

3.これらの権利と自由は、どのような場合であっても、国際連合の目的と原則に反して行使されてはならない。


第30条

この宣言のどの規定も、国家や集団や個人が、ここに掲げる権利と自由の破壊を目的とする活動に 従事したり、その目的で何かを実行したりする権利をも含むと解釈されてはならない。


エレノア・ルーズベルトのことばは、鎌倉グループ・メンバーの訳、「世界人権宣言」前文および各条の日本語訳は、アムネスティ・インターナショナル日本編  「はじめて読む世界人権宣言」に基づいています。